「設計と現場日誌」
台風19号で被災された皆様へ。住宅再建に役立つ情報
このたびの台風19号の被害状況が明らかになるにつれ、水害のひどさに愕然とします。
そんな中、同業者の勉強会のつながりでFacebook友達となっている神奈川県の建築家の方から、Facebook上で住宅再建に役立つ投稿があることを教えて頂きました。
投稿者は岡山県北の新見市と美作市の唯一の弁護士として活動している大山知康先生です。
同意を頂きましたので引用してご紹介させて頂きます。
以下引用です。
【台風19号に被災され生活再建に向かう時期に知っておいて欲しい支援制度と注意点~平成30年7月豪雨災害の経験から】(シェア希望)
台風19号被災されて生活再建に向かう時期に、被災された方に知っておいて欲しい支援制度と注意点を、岡山県で、平成30年7月豪雨で被災された方からの相談を弁護士として受けた経験をふまえて以下にまとめました。
支援制度は概要にとどめ支援制度を利用する際の注意点も書きましたので、詳しく知りたい方は各項目のリンク先か被災者生活再建ノート(日弁連)をご確認ください。
1 り災証明書
2 被災者生活再建支援金
3 義援金
4 災害弔慰金・災害障害見舞金
5 土砂撤去
6 応急修理
7 自然災害債務整理ガイドライン
8 悪徳商法に注意
9 公費解体・自費解体
10 被災者生活再建ノート
1 り災証明書
被災された方は、まず、住宅の被害の程度を証明するために、市町村でり災証明書を取得してください。り災証明書が以下で取り上げる支援制度の多くを利用する際に必要となります。
り災証明書では全壊、大規模半壊、半壊、一部損壊などと判定を受けます。判定に不満がある場合には、再調査を依頼することができます。再調査はより厳密な調査となり、判定が不利になることもある点はご留意ください。
被災直後の片付ける前の被害家屋の写真があれば良いですが、無くても申請をできますのでご安心ください。
平成30年7月豪雨の倉敷市真備地域ではまとまった地域が一括で全壊認定され、早期にり災証明書が発行されました。台風19号でも一括認定がなされれば個別の調査無く早期にり災証明書が発行される地域もあると思います。
http://www.bousai.go.jp/…/hi…/pdf/risaisyoumeisyo_gaiyou.pdf
2被災者生活再建支援金
全壊の方が住宅を建て直した場合には、最大300万円の支援を受けることができます。
大規模半壊の場合で住宅を立て直した場合には支援金は最大250万円です。
り災証明書を受け取っただけでは支給されず、基礎支援金と加算支援金を2回に分けて市町村に申請する必要がある点を覚えておいてください。
基礎支援金は発災から13ヶ月以内、加算支援金は発災から37ヶ月以内という申請期限がありますのでご注意ください。
半壊の場合には、自宅を倒さないと支援金の支給を受けることができませんが、自宅を一度倒して建て直すのが良いか、支援金はもらえないが家を倒さずにリフォームした方が良いか慎重に判断してください。
支援金の適用範囲は、市町村単位や県単位で決まるので、お住まいの地域が適用があるか市町村にご確認ください。
https://www.gov-online.go.jp/…/h3007…/assets/images/life.pdf
3 義援金
自治体に集まった全国からの義援金が発災後しばらくして、被災された方に分配されます。義援金の分配時期は市町村によって様々ですので、市町村でご確認ください。何回かに分けて分配されますので、自分が受け取っているのが、何回目の義援金なのか、もしくは被災者生活再建支援金なのかをきちんと把握して、被災者生活再建支援金や義援金の申請を忘れないように注意してください。
4 災害弔慰金・災害障害見舞金
災害により家族の生活を支えていた方が死亡された場合は500万円(それ以外の方の場合250万円)の災害弔慰金、家族の生活を支えていた方が災害により重い障害を負った場合には250万円(それ以外の方の場合125万円)の災害障害見舞金を受け取ることができます。こちらも市町村に申請する必要がありますので、申請を忘れずにしてください。障害についてはかなり重い障害に限定されています(詳しくは下記のリンク参照)。
災害弔慰金は、災害により直接死亡した場合だけで無く、災害が終って避難中に災害が原因で死亡したといえる場合(災害関連死)にも支給されます。災害関連死と認められるかどうかは判断するのは非常に難しいので、申請するか迷われた場合には、弁護士にご相談ください。
過去の災害でも多くの方が避難中に亡くなっていますので、避難中の体調管理も生活再建の1つと考え体調優先で行動してください。
http://www.bousai.go.jp/taisaku/choui/pdf/siryo1-1.pdf
5 土砂撤去
災害直後に自治体に自宅敷地内の土砂の撤去を自治体に依頼すると、「私有地の土砂の撤去はできない」とか、「(災害救助法の)土砂撤去は住宅に危険が及ぶ範囲や玄関付近のみしかできない」とか言われることがあります。
しかし、災害からしばらくすると自治体が環境省災害廃棄物処理事業を利用して、土砂混じりガレキの撤去が始まります。この制度であれば私有地の土砂も公費で撤去してもらえますので、自分やボランティアで対応できない大きなガレキや石などは、無理をせず自治体の環境省災害廃棄物処理事業の利用が開始されるまで待つのも一つの方法です。ただ、この事業は被災者の権利では無く、どこまで行うか、いつ行うかは行政の判断になりますので被災者からは要望できるだけとなります。平成30年7月豪雨災害では積極的に私有地の土砂混じりガレキが公費で撤去されていましたので、お困りの方は自治体に要望をしてください。台風19号は、広範囲で災害が生じているので、公費での土砂の撤去を待っていては時間がかかり、生活再建が進まない場合もありますので、ボランティアの力を借りて早期に土砂を撤去した方が良い場合もあるのでお近くのボランティアセンターにご相談ください。
6 応急修理
災害救助法により、玄関やトイレなどの修理のために59万5000円までの工事の支援を受けることができます。修理ができる範囲が限定されていますし、費用は、市町村から直接業者に支払われるので、市町村にまずはご相談ください。
ただし、この制度を使うと自宅に住むことができるようになったとみなされ、仮設住宅に入ることができない取扱いになっていますのでご注意ください。急いで応急修理制度を使うのではなく、住宅の再建方法が決まり、予算の目処がたってから、再建の中の一部として利用すべき制度だと思います。なお、新たに一部損壊(損壊率10%以上)にも30万円までの応急修理制度が使えるようになりました。
https://www.city.nagano.nagano.jp/soshiki/shidou/439821.html
7 自然災害債務整理ガイドライン(被災者ローン減免制度)
災害前の住宅ローンなどの債務の支払いが災害の影響で難しくなった場合に、その債務を減額・免除する制度です。車のローンや個人事業主の方の事業ローンも対象となります。500万円までの財産を手元に残せ、被災者生活再建支援金や災害弔慰金なども別途手元に残せる場合があります。水害で家屋の損壊が少ない場合には、家屋に価値が残りますし、敷地が損壊していないことが多いので水害の場合には、家屋や敷地の価値の分の債務の返済をする必要があり、債務の減額が地震に比べ小さい傾向にあるようです。手続きも半年から1年程度かかることが多いです。しかし、このガイドライン利用中は支払いが猶予されますので、ガイドラインを途中で止めても、最後まで手続きが終わってもブラックリストにのりませんし、登録弁護士による支援も受けられますので、迷ったらガイドラインの利用をまず申請してみることをおすすめします。
http://www.dgl.or.jp/guideline/pdf/disaster-gl_leaf.pdf
8 悪徳商法に注意
平成30年7月豪雨でも、リフォームなどで悪徳商法の被害に遭われる方が多くいらっしゃいましたので、被災直後はなかなか業者さんに注文することすら難しい状況になりますが、日頃からお付き合いがある業者さん、地元の業者さんや名前をよく知っている業者さんに依頼されることをお勧めします。もし、悪徳商法ではと思われた場合にはすぐにお近くの弁護士会にご相談ください。
※追加情報です。
お近くの信頼できる建築業者を検索できるサイトがあります。それが「すまい再建事業者検索サイト」。このサイトは災害等により被災した住宅の補修工事等が可能な事業者を検索するサイトとして、国土交通省の協力を得て、平成31年3月8日に開設されました。
9 公費解体
被災後しばらくして、公費解体の募集が市町村で始まります。既に自費解体した場合にも公費を受け取ることができることが多いですが、金額には制限がありますし、必ず公費を受け取ることができるとは限りません。また水害(水没被害)の場合には家屋が残っており、リフォームも重要な選択肢の1つですので、特に自費解体の場合には焦らず慎重にご検討ください。
10 被災者生活再建ノート
日本弁護士連合会が作成した被災者生活再建ノートは、主な支援制度が網羅的にまとまっていますし、支援制度を検索するフローチャートなどもあり、平成30年7月豪雨災害では多くの被災された方が「わかりやすい」と利用されていましたので、一度ご覧ください。きっとお役に立つと思います。
http://www.okaben.or.jp/active/pdf/saiken_note.pdf
なお、被災直後の心構えについては、広島弁護士会の今田健太郎弁護士作成の「【水害直後 弁護士からの10か条】〜西日本豪雨の教訓を踏まえて」(https://www.facebook.com/kentaro.imada.31/posts/2151984011572491)をご覧ください。
大山先生、ありがとうございました。